普通の人のすごい事

広島でがんばっている普通の人のすごい魅力を紹介するフリーペーパー

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vol.27表紙

vol.27
2018年
11月1日発刊
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216

古美術 むさし堂店主

西明 小三郎

(ニシアキ・コサブロウ)

時代屋の古時計たち

fs216_sub01「この店にある品物、お前だったらいくらの値をつける? 俺が納得する値段だったら、この店譲ってやるよ」『古美術 むさし堂』の二代目として西明さんが出発したのは、先代店主であるお父さんのそんなひと言からだった。だが、譲ってもらうにしても、単に店を引き継いだわけではない。先代は息子が見積もった額を見て、「半分は負けてやる。残りの半分は銀行に行って金を借りてこい」といって金策に走らせ、のっけから経営の厳しさを息子に突きつけたそうだ。

鮮やかというか、粋な引き際ですねと言うと、西明さんは「いま振り返るとね。でも、当時はなんて親父だと思いましたよ。骨董のことは何ひとつ教えてくれなかったけど、金の借り方だけはあんなやり方で教えてくれたんですから…」と笑う。きっと先代は誰かに教えてもらうだけでは本物を見る眼は養えない。自分で磨いてこそ、古美術商としての眼力は育つんだということを、息子に知ってほしかったのだろう。

fs216_sub02実際、研究熱心な西明さんは独学で知識を重ね、骨董通と言われるお客さまの信頼を着実に獲得していった。しかし、古いものを愛でる楽しみは、決して“通”と呼ばれる人たちだけのものではない。楽しみ方は人それぞれ。もっと気軽に古いものと一緒に暮らす喜びを味わってほしいと、西明さんは持ち前の器用さを生かして、専門店も匙を投げるような古時計の修理を請け負うようになった。

「共に時を刻んできたという思いがあるせいか、時計に愛着を持つ人は多いですね。モノにもよりますが、昭和以前の時計も修理をすれば、きちんと動くんですよ」と語る西明さん。カチコチ、カチコチ…。店内に響く時計たちの音を聞いていると、古い物に宿った魂の音を聞いているような気がした。

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「こんな建物があったんだ!」と、思わず惚れ惚れと見入ってしまう骨董屋さんの『むさし堂』。普請道楽だったという先代が当初は料亭を開くつもりで、凝りに凝った造りにしたらしいですが、奥さんの猛反対にあって、料亭としてデビューすることはなかったそうです。

店内にはアンティークの壁時計をはじめ、さまざまな骨董品が並んでいますが、実は西明さんが最も得意としているのは、古伊万里をはじめとする焼き物たち。取材当日は江戸時代末期に広島で作られていたという幻の焼き物、『江波焼』も見せていただきました。

発見点数も少なく、とても貴重と言われる『江波焼』の説明をしながら、「骨董を愛でるというのは、“よくぞ形を残したまま、ここまでたどり着いてくれたね”という思いだけでいいんじゃないかな」と語ってくれた西明さん。そんな西明さんの言葉を聞きながら、古いものと暮らす喜びが、ほんの少しですが、垣間見えたように思えました。

 

●古美術 むさし堂

(住)広島市中区宝町8-11

(tel)082-542-3973

(営)10:00〜18:00

(休)日・祝

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写真撮影:朝比奈千明 / 文:寿山恵子

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