普通の人のすごい事

広島でがんばっている普通の人のすごい魅力を紹介するフリーペーパー

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vol.29表紙

vol.29
2019年
5月1日発刊
  • すごい事
  • 225
  • から
  • 232

224

動物供養碑研究家

大丸 秀士

(ダイマル・ヒデシ)

石に刻まれた、生き物語り

fs224_sub01江波山気象館から歩いて少し下ると、海が見える見晴らしのよい場所にたどり着く。その一角に目指す供養碑『広島工業港魚介藻類慰霊碑』があった。案内してくれたのは、広島市安佐動物公園 元園長の大丸さん。動物園を退職後、大丸さんはかねてより興味のあった動物供養碑について県内を調べ歩き、その結果を一冊の本にまとめた。
「仕事柄、各地の動物園を訪れる機会があり、その際、多くの動物慰霊碑を見かけたのがきっかけで、石碑に関心を持つようになりました。生き物に対する情愛や畏敬の念は日本人に限ったことではないけれど、それにしてもこれほど多くの慰霊や供養の碑を建立する民族は他に例がない。私がまとめた本には、広島県内にある145箇所の動物供養碑が掲載されています」
fs224_sub02日本には動物や魚介類、ときには植物や道具にいたるまでを「いのち」と捉え、その死を祀る風習がある。そこには“万物に霊が宿る”とする日本人ならではの考えが根本にあるのかもしれない。供養塔を調査していると、そんな日本人の精神性も垣間見え、「興味が尽きない」のだと大丸さんは語る。
それにしてもすごいのは、労を惜しまず、自分の足で県内各地を尋ね歩く、大丸さんの情熱だ。供養碑の中には今は使われていない道の果てや、山奥にひっそり佇むものも少なくない。人々から忘れ去られた石碑を探し歩く旅は、想像以上の苦労が伴うはずだ。それでも後世で誰かが知りたいと思った時、「わかるような記録を残しておきたい」と語る大丸さん。郷土の記憶を調べ、伝えていくということは、こうした無垢な献身性に支えられているのかもしれない。

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古い馬頭観音などの場合、長いあいだ風雨にさらされ、表面の劣化がひどく、文字が読み取れないこともあるそう。そこで考案された秘密兵器がベビーパウダー! 軽くパウダーを押し当てると、へこんだところが黒く残って文字が読めるそうです。文字だけでなく、ときには寝ている牛や走っている牛など、躍動感あふれる絵も浮かび上がり、アルタミラの壁画を見るような感動があるのだとか。もちろん、調査のために使用したベビーパウダーは、火吹き竹できれいに取り払われ、石碑を傷めないように配慮しているとのこと。なかなか根気のいる作業ですよね。

 

●広島県の動物供養碑『石の生きもの語り』

大丸 秀士著

 冒頭、ご紹介した江波山の『広島工業港魚介藻類慰霊碑』は、昭和の初めにこの地が埋め立てられたことによって、魚介類の生命が失われたことに対して、慰霊碑が建てられたユニークな一例。この他にも大丸さんのご本の中には、かつて農家の大事な働き手でもあった牛馬の安全を願う「大仙信仰」や「馬頭観音信仰」による石仏の建立などの事例など、石に刻まれた生き物の物語が145箇所ほど紹介されています。“供養碑”という切り口から見えてくる、生きとし生けるもの対する敬意と畏怖の念。興味のある方は、ぜひ、手にとってご一読ください。

 

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写真撮影:吉岡早百合 / 文:寿山恵子

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