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鉄板焼き・お好み焼き
「うつろ木」店主
西村 伸
(ニシムラ・シン)
あの日、あの時、支えとなったのは
人と人のつながり
安佐南区でお好み焼き店『うつろ木』を営む西村さん一家。築100年以上の古民家を改装したという店内はとても雰囲気があり、5年前のあの日、ここにも土砂が流れ込んできたと聞いてもピンとこない。5年前のあの日とは、そう、2014年8月20日、広島土砂災害が発生した日のことだ。
「あの日、朝起きてお店に歩いて向かったのですが、知っている風景が一変しているのに愕然としました。自分にとってこのまちは生まれ育った地元。それが思い出ごと、すっぽり土砂に埋まってしまったような気がしましたね。正直言うと、災害から何日かの記憶がないんですよ」
記憶が飛ぶほどの衝撃…。あの災害がいかに容赦ないものであったかがよくわかる、被災者ならではの証言だ。
駆けつけた友人や常連客も現場の惨状を目の当たりにし、「これは人手が必要だ!」と、SNSを介して応援を要請。おかげで『うつろ木』にはすごい人数の人が集まり、西村さんたちは被災者でありながらも、自ら地域をまわり、支援を必要とするお宅へ人手をまわす役割も担うようになった。「多い時で400〜500人、週末で150〜200人はいたかな」と記憶を辿る西村さん。手ぶらでは作業はできない。スコップや資材の調達に奔走し、集まってくれた人に炊き出しをしたりと、次から次へとやることに追われ、毎日休みなく働いたそうだ。その後、年末を迎える頃になって、ようやくお店も再開。表向きには完全復活したように見えるが、「現状はまだまだ」だという西村さん。しかし、子どもたちの記憶に暗い影を残したくないから、落ち込んでばかりもいられない。被災地の人たちにとって、これからの頑張りこそが本当の復興だ。
web限定のおすすめ情報
もともとは西村さんのお母さんがランチを提供するお店としてスタートした『うつろ木』。同じ建物ではありますが、お好み焼き屋さんとお母さんランチのお店はお隣さん同士として営業しています。なので、入り口は別々(ちなみに定休日も別々)。ご利用の際はご注意ください。
取材時、スタッフが頼んだのは、肉玉ソバにシソが入ったうつろ木焼き。たっぷりトッピングされたネギと外側はパリッと香ばしく、内側はしっとりと絶妙な食感の麺が最高に美味しかったです!
ここ数年、記録的な豪雨や台風が多発し、そのたびに私たちの災害の記憶も次から次へと塗り替えられています。そんな中、広島で起こった災害の記憶が「過去のもの」になってしまわないよう、2014年の広島土砂災害の際、復旧に尽力されたお好み焼き店『うつろ木』の店主・西村さんに当時のお話や現在の心境をおうかがいしました。
被災後、西村さんのお店は一時期ボランティアが集う復旧活動の拠点のような役割を果たしており、地元の方やボランティアの人々は、親しみを込めて西村さん一家を「うつろ木ファミリー」と呼んでいたそうです。翌2015年には当時の功績が認められ、一家で「社会貢献者表彰」を受賞。受賞後、西村さんは「助けてくれた人全員がファミリーだ」と語り、あらためて人と人のつながりに心から感謝の意を示しました。
あれから人々の暮らしは元に戻ったかというと、実際のところ微妙だと語る西村さん。取材を終えての帰り道、あたりはまだ災害対策の工事が進められており、遠くから見てもわかる、むき出しになった山の地肌がなんだか痛々しかったです。
●お好み焼き・鉄板焼き うつろ木
(住)広島市安佐南区緑井8-9-21
(営)昼:11:30~15:00(14:30LO)
夜:17:00~22:00(21:00LO)
(休)水曜(*お隣のお母さんランチは土・日・祝がお休みです)
(tel)082-877-2823
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写真撮影:吉岡早百合 / 文:寿山恵子

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