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お茶と茶道具 綿岡大雅園 店主
岩田 美穂
(イワタ・ミホ)
まちの記憶を刻む老舗茶舗
創業90余年を誇る十日市の老舗茶舗、「綿岡大雅園(ワタオカダイガエン)」。店内に一歩足を踏み入れると、棚にはひと目で年代物とわかるお茶缶が並び、老舗ならではの独特な雰囲気を漂わせている。最近ではそのレトロな雰囲気に惹かれて、「ふらりと立ち寄る外国人の方も多いんですよ」と店主の岩田さんは笑う。岩田さんの旧姓は綿岡さん。同店は岩田さんのご実家であり、大正12年に事業を始めたのは岩田さんの祖父である。しかし、1945年、広島のまちに原爆が投下されると店舗は全焼。綿岡家も岩田さんのお母さん一人を残して、みんな原爆に命を奪われてしまったそうだ。
広島の方ならご存知の方も多いだろうが、平和と家族の尊さを描いた絵本、『いわたくんちのおばあちゃん(主婦の友社刊)』は、実は岩田さんのお母さんのことであり、現在のお店は、たった一人生き残ったお母さんが戦後になって再建したものである。
老舗としての歴史だけでなく、まちの記憶もその歴史に刻んできた、「綿岡大雅園」。だからだろうか、岩田さんは「広島のまちは原爆ですべてを失ったけど、いまも同じ場所で、同じ職種で、商売を営む店があることを知ってほしいんです」と語る。
大型店舗等の登場により、多くの専門店が姿を消す中、趣向を凝らしたワークショップやインバウンドのお茶体験など、魅力ある店づくりを展開し、暖簾を守ってきた岩田さん。美味しいお茶の淹れ方や茶葉の選び方などをさりげなくアドバイスしながら、昔ながらの量り売りでお茶を売るスタイルもどこか温もりが感じられ、あらためて「専門店っていいな」という魅力を私たちに教えてくれている。
web限定のおすすめ情報
店の前を通るたび、なぜか気になっていた「綿岡大雅園(ワタオカダイガエン)」さん。入ってみたいけど、ちょっと勇気がいるな……と感じていた方はけっこういらっしゃるのではないでしょうか? そんな方のために、同店ではゆるっとした雰囲気のなか、お茶について学べる、「ゆるゆる茶道教室」を開催しています。1日限りの体験教室も受け付けているので、気になる方は気軽に参加してみてください。その名の通り、ゆるっとした雰囲気がなんとも心地よく、岩田さんのほんわかトークにも心が癒されますよ。また、岩田さんはご自身のお母さんの体験などをもとに、本川小学校の平和資料館でガイドもつとめています。こちらの方も気になる方はぜひ立ち寄ってみてください。
●お茶と茶道具 綿岡大雅園
(住)広島市中区十日市町1丁目3-24
(営)10:00〜18:30
(休)土曜日・日曜日・祝日
(tel)082-231-7277
「ゆるゆると気楽に学ぶ茶道教室」
毎月第3日曜日の10時半から、「綿岡大雅園」の店舗内にて開催しています。参加ご希望の方はお電話か、同店のフェイスブックにてお問い合わせください。
また、「あとりえ しおん」さんのレッスンルームにおいても、毎月第3木曜日の13時半から同様の教室を開催しています。こちらの問い合わせ先は下記の通りです。ご都合の良い方を選んで、ぜひ参加してみてください。
●あとりえ しおん
(住)広島市中区幟街2-1 第3旭東ビル2F
(tel)082-228-0256
(HP)https://www.atelier-shion.com/
※HP内のお問い合わせフォームからも申込みできます。
web限定フォトギャラリー
写真撮影:朝比奈千明 / 文:寿山恵子

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